将来に向けて「貯蓄から資産形成へ」
一生懸命働いている皆さん、働いてためたお金を「どこに置いておくか」考えたことはありますか?
現代の日本において、「資産の置き場所を考え、効率よく資産を作ること」は重要です。貯蓄と資産形成の違いや、資産形成の効果について理解を深め、目的に応じてバランス良く使い分けられるようになりましょう。
貯蓄と資産形成の違い
「貯蓄」とは、一般的に余剰資金を現金や預金など、安全な元本確保の資産に置いておくことをいいます。一方、「資産形成」とは、元本が確保されていない資産での運用を取り入れながら、資産を増やしていくことを言います。
それでは、なぜあえて「元本が確保されていない資産で運用」することが必要なのでしょうか?
貯蓄だけでは足りない?資産の積立期と取り崩し期について
人生における資産の推移は、一般的に、就職から退職までの積立期と、退職後の取り崩し期に分けられます。
現在は、高齢化により取り崩し期が長くなっているため、資産をためていたつもりでも、底を尽きてしまう可能性があります。若いうちから資産形成を行い、取り崩し期にも安心して生活が送れるよう準備しておくことが重要です。
30年以上前の日本は高い経済成長があり、預金金利も高く、働いていれば給料が上がる時代でした。
しかし、現代の日本は、定期預金金利が0.002%(100万円を10年間預けても200円)、雇用形態は多様化、「働いたお金を貯蓄するだけで十分」とはいえない時代になりました。資産形成の必要性は高まってきているのです。
老後に向けてどれくらい資産が必要?
実際に、「老後」とは何年続くものなのでしょうか?
簡易生命表(*1)によると、60歳男性の平均余命は約24年、60歳女性の平均余命は約29年となっています。平均余命とは、ある年齢まで生きた人が、残り何年生きられるかを表したものです。
ただし、上記はあくまでも平均です。半分の方はそれ以上長生きする可能性があります。老後資金の準備を考える際は、少なくとも30年程度は見ておいた方が良いでしょう。
(*1)平成30年簡易生命表(厚生労働省)
では、実際の老後の生活費はどれくらい必要になるのでしょうか。
平均的な生活を送りたい方の場合
高齢夫婦世帯の年金受給額は、平均すると月額約20.4万円です。
趣味など娯楽に使えるお金が二人で約2.5万円という平均的な生活の場合、生活費は約26.5万円ですから、毎月約6万円を貯蓄から取り崩すことになります。これが30年続くと、約2200万円の資金が必要となります。
また、単身世帯の場合は、年金受給額は月額約11.5万円、生活費は約16.2万円となっており、年金だけでは毎月約4.7万円が不足します。
これが30年続くと、約1700万円の資金が必要という計算になります。
ゆとりある生活を送りたい方の場合
一方、夫婦でレジャーや海外旅行などを楽しむゆとりある生活を送りたい場合、必要な生活費は毎月約36.1万円です。
年金受給額を考慮すると、毎月約15.7万円を貯蓄から取り崩すことになります。
これが30年続くと、約5652万円の資金が必要という計算になります。
単身世帯の場合は、ゆとりある資金を上記夫婦の半分と考えると、必要な生活費は毎月約23.2万円となります。この場合、毎月約11.7万円を取り崩すこととなり、
これが30年続くと、4212万円の資金が必要となります。
老後に必要なお金を今から準備するには?
では、老後に不足すると考えられる金額を今のうちからためておくには、毎月どれくらいの積み立てが必要となるのでしょうか?
まずは平均的な老後資産、2000万円を目指して計算してみましょう。
預金のみで積み立てた場合、現在と同じ0.002%の金利が続いたと仮定すると、現在30歳、退職予定が60歳、積立期間30年で毎月の必要積立額は約5万6千円となります。
先ほどの例で、運用しながら積み立てた場合を考えてみましょう。
運用利回りを4%と仮定し、先ほどと同じく積立期間30年で2000万円をためる場合、毎月の必要積立額は、約2万9千円となります。先ほどの預金のみで積み立てていた場合は、毎月約5万6千円が必要となっていたので、必要な積立額が大きく減っていることがわかります。
早くはじめて長く続けることで高まる「複利効果」とは?
「老後はまだまだ先の話。まだ考えなくても良いのでは?」という方も多いと思います。しかしできるだけ早くはじめた方が複利効果を高められるため、必要な元手が少なく済むというメリットがあります。
長期運用で得られる複利効果とは
運用で得た収益を当初の元本にプラスして運用することで利益が増えていきます。
これが福利効果です。
月1万円ずつ40年間積み立てた場合のグラフを見ると、時間が経つにつれ、資産の伸びが大きくなっていることがわかります。つまり、複利効果は、長く運用すればするほど大きくなるということです。
運用期間による複利効果の違いはどれくらい?
運用期間による複利効果の違いをさらに具体的に見てみましょう。
老後のために2000万円ためたい場合、運用期間が40年と20年の場合では、それぞれ毎月いくら必要になるのでしょうか。
どちらも年4%で運用したと仮定すると、運用期間が40年の場合は、毎月の必要積立額は約1万7千円、積立元本の総額は、約816万円となります。
一方、運用期間20年の場合は、毎月の必要積立額は約5万5千円、積立元本の総額は約1320万円となります。
つまり、「運用期間が半分なら、毎月の積立額を倍にすれば良い」というわけではないのです。その場合、3倍以上積立額を増やさないと、目標額には到達しません。また、積立元本の総額も約500万円も増えることがわかります。
これは、運用期間が短くなると、複利効果による資産の伸びが小さくなるためです。効率的に資産を作っていくためには、なるべく早くはじめ、長く続けていくことが大事です。