株投資する人が押さえておかないと危ない重大ごと。

株投資する人が押さえておかないと危ない重大ごと。

新NISAのスタートで投資に注目が集まっています。積立投資だけでなく個別株式への投資も非課税枠が拡大されました。もし、個別株に投資するなら会社の財務諸表に目を通さずに買うのは推奨できる行為とはいえません。

投資には情報と心理の両側面がある

バリュー投資とは、成長が望める企業の株式を適正価格で買い入れ、適正価格より値上がりしたら売ることだ。これは容易に理解できるだろう。このとき、株の適正価格を調べるツールとして最も適切なのが、その企業の財務諸表だ。

だが、一般人が企業の財務諸表を理解するのは簡単ではない。用語からして難しく、見ただけではなかなか理解できない。ならば、財務諸表を最もよく理解しているはずの会計士たちは、投資もうまいのだろうか。

投資には情報と心理の両方の側面がある。情報面は、財務諸表を理解して解釈する能力だ。私たちはAmazonで20ドルのアイシャドウを買うときも、商品レビューの星の数が4個以上あるかどうかを確かめ、購入者がどんな不満を持っているのかをチェックする。

書店で1000円の本を1冊買うときも、事前に書評を読む。ところが、株を買うときには商品レビューも書評も見ずに、根拠もわからない噂だけで、数百万~数千万円を注ぎ込むという非理性的な決定をしてしまう。

株を買うなら、株の商品レビューにあたる財務諸表を読むべきだ。

また、財務諸表は一種の成績表でもある。企業の成長性を確認するのに、財務諸表ほど適切なものはない。過去から現在まで、その企業がどれほどがんばったかがわかるからだ。

大学入試を控えた受験生の成績のようなもので、これまでに成績がよかったら、これからもいい成績をとりそうだと予測できる。

逆に、成績が悪ければ今後もあまり期待できない。つまり、過去の成績は合否を判断する重要な指標だ。もちろん、勉強がよくできる学生が卒業後にパッとしなかったり、逆にそれまでパッとしなかった学生がぐんと伸びたりもする。

しかし、投資は確率のゲームだ。失敗をできるだけ減らすことが、成功の確率を高めることになる。つまり、リスクを減らすことが成功への近道なのだ。投資において冒険とは投機のことだ。利益が出ていなかったり赤字が予想されたりする会社をあぶりだし、リスクを減らすためにも、財務諸表を勉強し、理解することが絶対に必要だ。

自分で会社を経営していると、成長初期には利益よりも売上高が重要であり、その後は当期純益よりも営業利益のほうが重要であり、現金フローがよくないと黒字倒産する恐れもあるということがわかってくる。

財務諸表を理解して読み込めば見えてくること

財務諸表には、これらの情報がすべて入っている。当期純益は不動産の売却や他の投資によって増やすことができるが、営業利益の減少は本業の成績が振るわず資本を食い潰している状態だと解釈できる。

資本は多くても現金保有高ばかりが多くて事業投資が少なければ、これも経営状態を疑うべきだし、逆に成長が速く売上高が増加しているのに収益が伸びていないなら、急成長する可能性もある。こうした会社は市場でシェアを伸ばして利益構造を改善すれば、市場を独占する強者になるからだ。これらすべてのことが、財務諸表を理解して読み込めば見えてくるのだ。

結論から言うとこうだ。

私は身近にいる専門家が、その職業的知識を彼ら自身のために使わないケースを多く見てきた。甲状腺の専門医が甲状腺疾患にかかったり、弁護士なのに詐欺に遭ったり、会計士なのに世間の噂を信じて投資したりといった例はよくある。

会計士が一般の投資者よりも投資で好成績を収めているという話は聞いたことがない。医者が一般人よりも健康だという調査もないし、弁護士に世渡りがうまい人が多いという保証もない。

しかし、自分たちが望みさえすれば、医者は最も健康になれるはずだし、弁護士は最も公正な待遇を受けられる。会計士だって、最も投資で成功できるはずだ。

なのに、一般人とあまり変わらないのは、投資に専門知識が必要ないからではなく、投資のタイミングと心理については、会計帳簿を見ただけではわからないからだ

ピアノの調律師だからといって演奏がうまいわけではないように、会計士も帳簿によって会社の品質検査をするだけで、事実を確認したからといって株の売買のタイミングが正確にわかるわけではない。

なんと幸いなことか。さもなければ、この世の富はすべて会計士のものになっていただろう。

もちろん、品質検査の結果に他人より早くアクセスできるなら、投資でかなりの利益を上げることができるだろう。だから、上場会社の監査にあたる会計士は、その会社に投資できないよう法律で禁じられているのだ。

人生で「必ず一度やるべき勉強」とは

じつは、これは非常に簡単な問題だ。

あなたがある会社の株を持っているなら、自分がその会社の社長になったと考えてみよう。部下に頼んで今月の財務諸表を持ってきてもらう。自分の会社の状態を理解するには、財務諸表を読み込んで、状況を把握できなくてはならない。1日かけて、じっくり数字に目を通してほしい。そうやって自分が経営者になったつもりで財務諸表を見ていれば、その意味が解釈できるようになる。

すばらしいではないか。株主でも社長気分になれるのだ。

理解できないところがあれば、自分から勉強し、質問すればいい。こうした能力は、会計士だからといって特に優れているわけではない。英語の小説を読むためにアルファベットと単語をがむしゃらに暗記するように、会計も用語と仕組みを学ぶことで解釈できるようになる。

富を蓄えて投資者として成功したければ、財務諸表の勉強は必須だ。

私は自分にとってある知識が必要だと思えば、関連の本を30冊ほど一挙に買うようにしている。例えば会計について学びたければ、漫画で学ぶ会計学のような入門書から大学の教科書に使われるような専門書まで買いそろえ、1カ月でも2カ月でも一定レベルの知識が身につくまで、じっくり読んでみるのだ。そうやって大学で専門科目を履修したように勉強に集中すると、ある程度の理解ができるレベルになる。

どうせ人生で一度くらいはやるべき勉強だ。書店の棚に並んでいるレベルもさまざまな会計学の本をすべて買い、関連の講演も聞いて回ろう。

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